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2023年の三冊

年末ともなると、「今年の三冊」「今年の五冊」みたいな、年間まとめ企画が新聞や雑誌を賑わせますよね。今まで、ランキングはあまり意味ないかもと軽視していたのですが、最近、自分用にまとめておくのも悪くないかなと思うようになりました。目がしょぼくなり、読書量も大幅に減ったりして、逆にそういう「厳選」みたいなものに価値を見いだすようになってきたようです。人さまが選んだリストも興味深く思えてきましたし、個人的にも年間まとめを記しておくのもいいかな、と。

というわけで、まとめておきましょう。個人的に、今年読んだものでとりわけ印象的だったのは、次の三冊になります(ジャンルや出版年度などは無視することにします)。

  • グレゴワール・シャマユー『統治不能社会』(信友建志訳、明石書店、2022)
  • ローラン・ビネ『HHhH』(高橋啓訳、東京創元社、文庫版、2023)
  • D.グレーバー、D.ウェングロウ『万物の黎明』(酒井隆史訳、光文社、2023)

社会史、文学、人類学と、分野はそれぞれ異なりますが、いずれもなにがしかの既存の固定観念に揺さぶりをかけるものとして、刺激的な著作たちでした。

次点としてあと三冊ほど。

  • 星野太『食客論』(講談社、2023)
  • M.H.クリチャンセン、N.チェイター『言語はこうして生まれる』(新潮社、2022)
  • エルヴェ・ル・テリエ『異常【アノマリー】』(加藤かおり訳、早川書房、2022)

とくに『食客論』は個人的にインパクトがあり、これに触発されて、ルキアノスを読み始めました。来年も引き続きルキアノスを読み進めたいと思っています。

こうして挙げていくと、さらに三冊、さらに三冊と、いつまでも続けていけそうで(アンディ・ウィアーの『プロジェクト・ヘイル・メアリー』とか、ビネの『文明交錯』とか)、そういうところが「今年の○冊」の罠かな、という気がしないでもありません。

最近ますます思うのですが、フィクションでも論考でも、本はやはり対話相手として読むというのが基本的に重要で、冊数とか関係ないなあ、と。昔、テレビに向かって「何言ってんだおまえ」みたいなツッコミをする大人というのは確実に存在していましたが(笑)、本についても、そういうツッコミを入れながら読むというは、とても大事な気がしますね。

少し前に、X(旧ツィッター)で、これこれのリストから3冊読んでいれば哲学初段、みたいな投稿があって、なにやらひんしゅくを買っていた(?)方がいましたが、哲学の黒帯と言うならやはり、何を読むか、どれだけ読むかではなくて、読んだものをどれだけ批判的に受け止められるか、そしてその批判を一つの考えとしてどれほどアウトプットできるかによるのでは、と思いますね。ま、そこまでの強度はなくとも、とにかく日々ツッコミを入れる読書こそが、本当に面白い読書体験であるはずです。

来年もまた、新たな出会い、新たな面白い経験に期待したいです(締めの決まり文句ですが)。