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年越し本から(1)

以前のように、年末年始に年越し本としていろいろ買い込むなんてこともなくなってきましたが、少ないながらもなかなか楽しく本が読めた年末年始でした。とくにこれは引き込まれましたね。モアメド・ムブガル・サール『人類の深奥に秘められた記憶』(野崎歓訳、集英社、2023)です。

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かつて賞賛されながら剽窃を疑われてフランスの文壇を去った黒人作家。その足取り、そして人物そのものを、主人公のセネガル出身の若手作家がたどっていくというものなのですが、これが実にスリリングで、また文章もリズムに富んでいて、文学というものがかつて持ちえていたかもしれない(?)どこか呪術的な力を、なぜかノスタルジックに想起させるという、たぐいまれな小説でした。アフリカの土着的なものが、普遍的な何かとして昇華されつつも、すでに失われている、という逆説でしょうか?

複眼的にいくつもの文章や、登場人物の回想などを組み合わせて示すというのは、わりとはやりの手法という感じですが、それが主人公のナレーションから陸続きのままスイッチングするというあたりが、なかなか斬新な気がしました。年頭に読めてよかったなあ、としみじみ感じました。