wowowオンデマンドで、『ペルシャン・レッスン——戦場の教室』(2020年)を観ました。ナチスの収容キャンプを描いた作品ですが、ちょっと捻りが利いているのは、主人公がペルシャ人と偽って生きのびようとする、という話になっているところです。ナチスの将校がペルシャ語を習いたいというので、この主人公は偽ペルシャ語を、文字通り「作り上げて」しまいます。これはシチュエーション劇として秀逸です。いつバレるのか、みたいな緊張感が、前半を中心に漂ってきます。
https://www.imdb.com/title/tt9738784/
この言語の創造過程も印象的です。まずは単語を作り上げなくてはなりません。その副産物が、最後に見事に利いてきます。統語法については描かれていませんが、劇中の主要な言語であるフランス語、あるいはドイツ語に準じたものになっているようです。このあたり、将校の側がその言語の虚構性を気づきそうな感じもするのですけどね。いずれにしても二人は、そうしてできあがっていく架空の言語で、会話できるほどになっていきます。なんというか、外国語学習につきまとう「虚構性」について、なんだか改めて考えさせられました。
ナチスの収容所を描いた作品は、『サウルの息子』などリアリズム重視なものが優勢で、こういう機知でもって難を逃れていくといったフィクション(実話からインスパイアされている、みたいな話ではありますが)は、これまであまりなかったような気もします(本当かな?)。本作の監督は、やはりとても印象的だった『砂と霧の家』(2003年)のバディム・パールマンです。なるほどね〜と思わず唸りましたね。ちなみにウクライナ出身の監督です。