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言語化できないものへのアプローチ

先月下旬にwowowで放映された『偶然と想像』(濱口竜介監督作品、2021)を録画で観ました。

https://www.imdb.com/title/tt14034966/

3つの短編からなるオムニバス。少し場面の構成や台詞回しが、映画というより舞台を思わせる部分があって、独特な空気(というか違和感)を生んでいる気がしましたが、長回しの多用などが、そうした違和感を少しだけ和らげている感じもして、なにやらとても独特な映像的時空間を作り上げています。

3つの短編はそれぞれ、とても知的に構成されたシチュエーションや展開が見事です。友達が意気投合した相手が元カレだということがわかり、修羅場を作りかけることになる第一話、作家でもある大学の教員に、ハニートラップをしかけようとして、逆に言葉の応酬を通じて自己の解放を促される顛末を描く第二話、そして偶然の出会いをきっかけに、若い頃の思いを、やっと見つめ直せた2人の女性たちを描く第三話。この第三話などはとりわけ感銘を受けました。

共通のテーマとしては、一つには言語化できないものの言語化の試みというのが、ありそうですね言。語化できないものを、そのようなものと合点できた人々の、なおも言語化したいという思い。静かな画面とはうらはらに、登場人物たちの心の中は嵐がふいていそうです。そういえば以前観た同監督の「『ハッピーアワー』も、やはりそんな感じの力作でした。