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『食客論』

星野太『食客論』(講談社、2023)を読んでみました。敵でも友でもない、二項対立をはぐらかす曖昧な存在としての「食客」。そうした食客をめぐる文学的試論です。通底するのは、共生より根源的な「寄生」についての議論です。個人的に、これは面白い!

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印象的な挿話の数々や議論展開。ちょっとだけ箇条書きにしておくと……。

  • ロラン・バルトの講義で意図的に曲解される、18世紀末の美食家ブリア=サヴァランの一言(人との会食は一時間は楽しめる → 一時間しかもたない)
  • 二項対立を突き崩す可能性の嚆矢としてのルキアノス「食客」
  • 博愛的なキケロが万人の敵とする「海賊」と、そこから連想的に問われるシュミットの敵・味方の関係論
  • ラーゲリの捕虜収容所を経た詩人・石原吉郎の食への両義的なかかわり

などなど。とくに個人的に気になったのは、やはりルキアノス(2世紀ごろ)ですね。というわけで、さっそくLoebの収録本をマーケットプレースで注文してしまいました(笑)。