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クセノフォン『家政論』

Loeb版のXenophon IV巻から、以前のMemorabilia(ソクラテスの思い出)に続き、Oeconoimcus(家政論)を読了しました。「家政論」はだいぶ前に、研究目的と称して特定の部分を飛ばし読みしたことがあります。今回は純粋な楽しみとして、細部をじっくり見たいと思いました。それなりに時間もかかりましたが、なかなか面白かったです。

(2023年8月24日現在、アマゾンではかなりの高値で古書が売られています)

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ソクラテスは狂言回しとして登場していて、とくに中盤以降のイスコマコスとの対話(の回想)では、完全に聞き役になっています。中身としては、要は家の内的な管理に長けていることが、事業の管理、さらには市民の統治といった上位の社会組織においても、長けていることになるのではないか、という話で、いわば哲人統治論の源流みたいな内容です。

面白いのは、ひとつには女性の聡明さを言いつのっているところです。もちろん当時のギリシアはすでにして男性優位社会ですから、女性は役割分担をあてがわれてしまうわけですが、それにしても女性が自然体でもって、暗黙知的なものを多用しつつ、家政の管理に果敢に貢献するという像が、とても印象的です。

また後半には、生活基盤としての農業と、それにまつわる細かな知恵が列挙されていきます。このあたり、管理業務の見本のような話が続いていて、バランス重視のイスコマコス=ソクラテス=クセノフォンの考え方が深く刻まれている感じがしました。

あとから知ったのですが、『家政論』は2010年に『オイコノミコスーー家政について』(越前屋悦子訳、リーベル出版)として邦訳が出ています。こちらも今は古書として高値がついています。もうちょっと手頃に入手できてほしいところですね。